4つの世界で踊る。
 たかいかかとでとん、と地とも空とも知れないそこを蹴って。
 おおきく飛んでいく。
 おおきく沈んでいく。

















ロンサム




















 真っ暗な闘技場。
 聞こえる靴音。





「リナリー。」







 長く伸びた脚を覆うくろいくつ。
 まっくろなくつ。







「リナリー、て。」









 とんとん、と三角跳び。
 そして眼前に黒い影。






「なあに、兄さん。」






 小さかった影はもう少女ではなくなっていた。
 背負っていたものを背負わせて、いつか迎えにいくからと突き飛ばした小さな影。

 目の前で微笑むこのこはなぜ微笑むのだろうか。
 見える憎しみや悲しみを、望んではいなかった道具で貫く。
 どうして。






「兄さん、ねえ。どうしたの。」








 わたしは罪深いはずなんだよ。
 助け上げることもできずにきみを新たな運命へ送り出した。
 ふたりだけになった悲しみを拭う間も無く、今度はきみをひとりの悲しみに。
 
 そしてさも助けに来たとでも言いたげにまた寄りそって。
 今度はきみに命を賭して戦えと書類を押し付けた。
 自分は白く汚れることなど考えられていない服をまとって。
 きみは赤い染みのめだたないように作られた黒い服をまとって。






「午後、ここへ飛んでくれ。」






 大事にしているふりをしている。
 闇へどんどん追い遣っておきながら、きみが大切だと叫んでいる。
 それに気がついていても、きみはまたいつもと同じように。







 ただ、微笑むのだ。
 とん、と小さな靴音を響かせて。
 いってきますと微笑みをのこして背を向けるのだ。

 にいさんのためにたたかうの。
 きみはいつだってそう言って笑うだけ。
 全てを知りながら、知らぬ顔で笑うだけ。









「わかった、いってきます!」








 微笑んで。
 また自由に4つの世界を踏み切って。
 地とも空とも知れないそこを蹴って。
 


 おおきく飛んでいく。
 おおきく、沈んで、いく。







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((ただいまが聞こえない))