答えは正しくなければ意味がない。
間違いならば大きくばつをつけてそれでおしまい。
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きみを抱きしめた。
答えを言わない代わりに、腰に腕を回して。
そして周到に口をきみの肩に押し付ける。
さあ、これで口はふさがった。
答えは言えないとか、言わないとかではなかった。
答えがなかった。存在しなかった。
きみは僕の胸に顔を押し付けて、そこに小さな染みをつくる。
乾いて消えてしまう、小さな染み。
後悔もなにもかも一緒に消えてしまえとでも言うみたいに、ただ染みをつくる。
「ごめん、ね。」
しゃくりあげながら切れ切れに言う。
腕に力がこもった。
きっときみは苦しいだろう。
それでも腕は緩まない。
「わすれて。」
残酷なひとことだった。
うぬぼれかも知れない。
でもあの言葉はきみが目一杯に気持ちを詰め込んで、破裂しそうに僕にくれたんじゃなかったの。
忘れてなんて。
きみの全部を綺麗に?
そんなこと言うな。
また腕に力が入る。
きみはさすがに苦しくなって、酸素を求めて顔を上げる。
残酷だった。
1週間後、僕は半年付き合った彼女と別れた。
きみはかわらなかった。
笑顔で僕の隣に座るけれど、1週間前のことなど忘れたみたいで。
中央線からしっかりと友達の側を選んで立っている。
そして僕は、きみの唇の温もりも抱きしめた腰の細さも全部棚に上げて。
きみがその線を越えてこないのをいいことに、この微妙な関係の心地よさに酔う。
誰かが自分を確実に好いている。
それだけで安心できたし、何よりきみは僕をよく知る友人のひとり。
無条件の安心がそこにはある。
そしてそのまま。
きみを隣に座らせて。
僕は人混みで迷わないように手を繋ぐ相手を見つけた。
答えは無いから、解答欄は空白のまま。
きみは赤くまるをつけた。
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((案の定きみは笑っておめでとうと言った))