きみと手を繋いで。
風の音に耳を澄ませたら聞こえたアイラブユー。
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梅には遅くて、桜には早い今を、どうして過ごしたらいいのか解らない。
左手に感じる強い風は、今朝のニュースで春一番と銘打たれたありがたい風らしい。
ただの強風だ、なんて言ったらきっとまずいんだろうな。
莫迦なことを考えながらジャケットのポケットに両手をしまいこんだ。
まだ慣れない。
半年ほど前は暑くて暑くて、手を繋ぐことも憚られた。
汗を拭き拭き、僕にぴったりと寄り添おうとするきみは滑稽だったけれど、それを忘れる程に。
暑さで生理的に早くなる僕の脈を、もっともっと早く早くして。
このままでは猫並みだとひとり不安になったりした。
夏草のむせるような強い香りは、きみの香水と混じって記憶に残る。
そう確か地元の河川敷。
背の高い雑草を見下ろしてきみを抱きしめたあのときの記憶で香り。
耳元に唇を寄せたら汗臭いからときみの腕に押し返されたんだ。
汗の匂いなんて覚えていない。
ただふわりと香った石鹸のようなあの甘い香り。
香りが邪魔で思い出せない。
きみはあのときどんな顔をしていたの。
美味しいケーキを食べたときの笑顔。
中華屋でパクチーを僕の皿に移すときのいたずらな顔。
きみが観たいと言い出した評判の泣ける映画を観た後のぐしゃぐしゃな顔。
はじめて唇を、きみのそれにおしつけた後の、真っ赤な顔。
終わってしまったサマータイム。
いじわるだねきみは。
全部を香りで塗り潰して、思い出にすらさせてはくれなかった。
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((ぼやけた記憶はもがくほど曖昧に))